オリンピックとスコットランド

北京オリンピックが終わりました。
今回英国のチームGBはメダル総数・金メダル獲得数で共に中国・アメリカ・ロシアに次ぐ4位という目覚しい成績を残したのですが、日本のテレビ中継や新聞記事からは、誰が何でメダルを獲得したものやらさっぱりわかりません。スコットランド出身の自転車競技選手クリス・ホイが、日本のお家芸ケイリンも含む金メダル3冠を獲得していたという大ニュースも、英国メディアでチェックするまで知りませんでした。まあこれは英国に住んでいたために日本選手の活躍をごっそり見逃した4年前のアテネ五輪と同じパターンを反対にしただけで仕方ないんですが。ただ、たまに英国選手が(たまたま日本選手も同じ競技に出場していたために)テレビに映った時にも、その選手がイングランドの人なのかスコットランドの人なのかということが全然わからないのが残念でした。

さて、オリンピックが巡ってくるたびにマスコミに登場するのがこちらの2つの話題。どちらもBBCニュースの見出しです。

Salmond rejects UK football team

Call for Scottish Olympics team

ひとつめは、英国首相(スコットランド人)のゴードン・ブラウンが「次のロンドン五輪にはぜひサッカーにチームGBを」と発言したのに対して、スコットランド首相(こちらももちろんスコットランド人)のアレックス・サーモンドが猛反対、という話。

英国では、国内のサッカー協会がイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドに分かれており、FIFAにもそれぞれ独自に加盟しているという事情から、オリンピックの男子サッカーにはチームGBが出場していません。次は五輪開催国になるのに、国内人気ナンバーワンの競技に自国チームが出ないなんてさびしい、というのがブラウン首相のもっともな言い分ですが、サッカー関係者にとっては、オリンピックにチームGBを出したことでなし崩し的にFIFAからも「それじゃこっちでもチームGBでよろしく」という声が上がり、今の4協会体制から合併を強いられるという結果になることが何よりも困るので、反対する方も必死。国内世論でも、イングランドはともかくそれ以外の「国」では、「いくら自国のサッカーが低迷を続けていても、イングランドに併合されるのは絶対イヤ」という声は根強いのです(なんせ自国チームがワールドカップに出られなかった年はイングランドと対戦する国を応援するのが基本、というお国柄ですから)。ラグビーではなぜか同じような体制になっているにもかかわらず、ブリティッシュライオンズというチームGBが南半球諸国と対戦したりすることもあるのですが、サッカーでは確執の根深さもあり、また、チームGBといっても現在の実力を見れば内容はイングランドチームそのままになってしまう可能性が高いということからくる反発もあって、ブラウン首相(繰り返しますがスコットランド人)の夢の実現はなかなか難しそうです。

もうひとつのニュースは「この次のオリンピックからはぜひ『チームスコットランド』を」というスコットランド政府の発言。

具体的には、スコットランド政府のスポーツ相(当然スコットランド人)スチュアート・マクスウェルが「ジャマイカみたいにちいさな国が金メダル獲得や世界新記録を出す快挙を遂げ、自国の誇りを世界にアピールした。スコットランドだって同じことができる」と、スコットランド独自チームでの出場を訴えたとのこと。一方でスコットランド労働党は「チームGBだからこそこんなにがんがんメダルを取って世界の晴れ舞台で輝くことができた。わざわざ弱小国として出場してどうする」と反発。スコッツマン紙では、前述の金メダル3冠王クリス・ホイ(前述の通りスコットランド人)が「チーム・スコットランドでやろうなんて馬鹿馬鹿しい話。チームGBだったからこそ自分も3冠を達成できた」とマクスウェル発言を批判した、という記事を掲載しています。

Chris Hoy: Scottish team in Olympics would be ‘ridiculous’

ところで、この話題に関連する記事を検索していたら、こんなデータに行き当たりました。

「あなたはスコットランド人か、英国人か?」という質問への回答の変遷
「あなたはスコットランド人か英国人か?」という質問に対する回�の変遷

スコットランド人度・英国人度を選ぶ質問への回答の変遷
スコットランド人度・英国人度を選ぶ質問への回�の変遷

要するに、スコットランドの人に「お前はスコットランド人(Scottish)か英国人(British)か?」と聞けば「スコットランド人だ」と答える人が1990年代以来ずっと7~8割を占めているが、もっと詳しく聞いてみると「英国人ではなくスコットランド人」「どちらかというとスコットランド人」「スコットランド人でもあり英国人でもある」が、実は大体同率くらいでせめぎあっているらしい、ということですね。オリンピックを巡るこんな論争が毎度出てくるのも、このあたりの反映といえます。

5 thoughts on “オリンピックとスコットランド”

  1. 初めてコメントします!そうなんだ~ っておもいました。スコットランド人といって居る人の中にも、詳しく迫ると、どっちかというと、とかってなる人多いんだね。知らなかった。。。 スコットランドにはなじみがあるため、ブログ、面白いデーす。私のもそろそろ更新しないとな。mixiはやってます。昨日キューバから帰ってきました。では!

  2. KANAさん、コメントありがとう!

    そうなんです、けっこう一筋縄でいかないところも多いのがスコットランド人のアイデンティティ。スコットランド代表サッカーチームの試合でキルト着てスコットランドの旗振って”Flower of Scotland”を歌っているサポーターたち、いわゆる「タータン・アーミー」の間には「スコットランド独立絶対反対」派が多いという話もあります。個人的には、上記の統計でずっと30%台で動いていた”Scottish not British”の比率が2007年に減少し、”Equally Scottish and British”にも追い抜かれた、という点に興味があります。2007年といえばスコットランド議会選挙の年で、スコットランド独立を党是に掲げるScottish Nationalist Partyが史上初めて与党になった年。そのあたりの政治的な動きに対して逆に反動が出たか?

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