Labour beaten in by-election shock ・・・激震

今日のスコッツマン紙のニュースフィードにこの見出しが。

Labour beaten in by-election shock

今日のスコットランドのニュースはこれ一色ではないかと想像します。

英国では伝統的に木曜日が選挙の投票日。夜10時に投票が終わるとすぐに投票箱回収、開票になり、その夜のうちには結果が発表され、睡眠不足で目を腫らした当選者の挨拶がテレビ中継で放送されます。私はつきあってられないので朝のニュースで結果を確認してましたが、この開票速報ライブが好きで徹夜でテレビにかじりつくという人もけっこういます。

そういうわけで、この間「SNP overtake Labour in poll ・・・ついに」と題した投稿でも触れたグラスゴー・イースト選挙区の補欠選挙が昨日行われ、結果が数時間前に発表されましたが、蓋を開けたらまさかの大逆転。労働党が永年指定席をSNPに譲る事態になりました。

開票結果発表の様子はこちらで(BBCビデオ)

個人的には「SNP大健闘するも労働党の支持岩盤を崩すには至らず」という結果を予想していたので、私もびっくりしています。そういえば去年の自治議会選挙の時も、私の予想は「SNP大躍進するが僅差で労働党が勝利」だったからなあ。どうも私はスコットランド政治地図の変動ぶりを過小評価してしまう傾向があるような・・・。比例代表制の自治議会選挙と違い、ウェストミンスター議会選挙は現在もストレートな単純小選挙区制。小幅の変化は死票として飲み込まれてしまう制度の中で、前回選挙での13,507票の差をひっくり返したとなれば、まさに大地震クラスの地殻変動がスコットランドで起きていると言っていいでしょう。

さて、この結果を受けてまず誰もが考えるのはゴードン・ブラウン首相の運命。ここのところ労働党は選挙敗北が続いていて、全国でももっとも安全な議席のひとつだったはずのグラスゴー・イーストまで奪われたとなると、指導力に疑問符がつくのは必至。自主的に辞任しない場合、旧ブレア派による党内反乱でブラウン追い落とし、という事態になることが考えられます。

一方スコットランド労働党については、本来なら当然こちらも党首の首が落ちる事態ですが、すでに党首は6月に別の問題の結果辞職しており、党首選までの代理党首が指揮している状態。今回の選挙の影響がこの党首選に及ぶ可能性はあるかもしれませんが、変わらなきゃというのはわかっていても具体的な変革者が出てこないという手詰まり状況を打破できるのか?しばらくは混迷から抜け出せないのではないかという気がします。

SNPの方はというと、スコットランド政府が「スコットランドの未来を考える国民の会話」を継続中。これを通じて、今はまだ少数派にとどまっているスコットランド独立への支持を、徐々に広げていきたい考えです。

英国議会の総選挙は、スケジュール通りなら2010年5月。まだまだ状況が変わるのに充分な時間はありますが、このまま労働党不振が続いて保守党が政権奪回という事態になった場合、それがきっかけになってスコットランドが独立に向かって走り出す可能性もあり、地殻変動の影響がどこまで及ぶか、予想し難い状況になってきました。

SNP overtake Labour in poll ・・・ついに

SNP overtake Labour in poll

・・・という見出しが今日のスコッツマン紙のニュースフィードにありました。

スコットランドで「英国で国政総選挙があった場合どの党に投票するか?」という世論調査を行ったところ、SNP (Scottish National Party、スコットランド国民党などと訳されることが多い)が33%の支持を得てトップに立った、というものです。SNPはスコットランド独立を党是として掲げる党です。現在英国議会の与党である労働党は29%で2位。

これ、実はものすごい結果です。スコットランドは伝統的には労働党の大票田。保守党政権が続いていた時期もスコットランドは常に労働党支持の厚い岩盤のような存在でした。時折SNPが勢いを得ることはあっても、所詮労働党の優位をひっくり返すことはできず、ちょっと波を立てるのがせいぜいという感じでした。

そこに変化が生まれたのが去年5月のスコットランド自治議会選挙。選挙戦が始まる前から世論調査などの結果でSNP支持が伸びを見せていて、「今回は労働党、ちょっと危ないんじゃないか」とささやかれていました。当時はまだ英国議会ではトニー・ブレアが首相。イラク戦争に端を発するこの人のスコットランドでの不人気ぶりが糸を引いていました。スコットランド自治議会は比例代表制のため議席数獲得に大差がつきにくいこともあり、労働党与党も自由民主党との連立内閣という形でやっと過半数を確保していました。「今回はSNPが躍進しそう」という声に危機感を持った労働党は「SNPに政権を与えてスコットランドが独立ということになったら大変だ」というテーマで選挙戦を展開。そのあまりのネガティブ・キャンペーンとビジョンのなさが逆に反発を招いて、ふたを開けたら結果は1議席差でSNPがトップに。こうしてSNPが少数政権ながら自治議会を制し、サーモンド党首が自治議会首相となりました。

このサーモンド首相、マスコミも労働党もいつコケるかと待っていたのだが意外に評判が良くて、「やっぱりSNPに投票したのが間違いだった」という声はいっこうに出てきません。一方の労働党はまさかの野党落ちのショックで迷走状態。選挙後党首となったアレクサンダーが早くも辞職する事態になり、再興の糸口がなかなか見えてきません。また、スコットランド労働党にとっては再生の期待の星だったスコットランド出身のゴードン・ブラウンがやっと英国首相の座についたものの、こちらは意外に人気が出ず、ゴードン効果は期待はずれに終わってしまいました。そんな背景で、ついに出てきてしまったのがこの、「英国総選挙での投票」を前提とした世論調査での労働党2位転落、というニュースでした。スコットランド自治議会選挙を前提とした調査ではなく、英国総選挙を前提とした調査でSNPが労働党を抑えて支持率トップに立ったのは、今回が史上初めてではないかと思います。

この報道、よく見ると世論調査は「YouGov poll for The Daily Telegraph」となっています。YouGovはインターネット投票による世論調査サイト。Daily Telegraphは反労働党で知られる保守系全国紙。この報道をDaily Telegraph紙サイトで見てみると、見出しは「Only third of Scots favour independence」となっており、SNPが支持でトップに踊りだしたことではなく、同じ調査で独立支持は36%にとどまり、独立反対は48%と依然大きな差があることの方に注目しています。Daily Telegraphの支持する保守党(正式にはConservative and Unionist Partyといい、連合王国の枠組保守が党是)はスコットランド独立に強硬反対しているので、これは当然。労働党転落はうれしくてもSNP躍進はうれしくないので、独立不支持がいちばんのグッドニュースなわけです。

それよりも、調査媒体がYouGovであるというのが目を引きました。インターネットユーザーに限定される世論調査なのでその正確さが疑問視されることも多いYouGovですが、一方で選挙結果予測の世論調査では伝統的な世論調査よりもむしろ正確な予測を出すことも多く、注目されている媒体です。スコットランドでは一般に、高年者層で労働党支持が強く、若年層でSNP支持が増えるという傾向があります。また、スコットランド独立に関しても、年齢層が下がるほど独立支持も増える傾向が強くなります。インターネットベースの世論調査では若年層の声が強くなるんじゃないかという気もします。YouGovではそのへんを均一化するため調査結果をフィルターしているそうですが、どうなんでしょうね。現実的な投票行為と世論調査のギャップというのも常にあるわけで(まじめに投票に出かけるのは高年者層)、まあいずれにしても鵜呑みはできないでしょうが。

今回のYouGov調査、サイト掲載の結果レポートを見るとかなり多岐に渡る質問が設定されているのですが、中でもいちばんスコットランド労働党が気にしているのは、補欠選挙に関する質問の結果でしょう。
現在スコットランドでは、7月24日に行われるグラスゴー・イースト選挙区補欠選挙の選挙戦の真っ最中。グラスゴー・イーストは、日本人には「中村俊介がプレーするセルティックのホームグラウンド、パークヘッドがある選挙区」と言うのがわかりやすいでしょうか。英国でももっとも貧困問題に苦しむ地域のひとつと言われ、また労働党の永年指定席のひとつ。前回の選挙では労働党候補者が票の43%以上を獲得して大差で勝っているのですが、ここのところ英国全国で起きている労働党惨敗の影響が心配されています。YouGov世論調査では「この補欠選挙でどの党に勝ってほしいか」との質問に、労働党が33%、SNPが49%。もちろん回答者のほとんどはこの選挙区の有権者ではないので実際にはあまり意味のないデータですが、もし勢いに乗ったSNPが勝つ事態になったら、スコットランド政治、英国政治に激震が走ることになるのは間違いありません。